ヴィジュアル系音源レビューという名目の戯れ言。

ヴィジュアル系、又はそれらと親和性の高い音楽CDの出来損ないレビューです。失礼なことも敢えて平気で書きますが完全に小僧の戯れ言なので気にしないで頂けたら幸いです。

Killer Show/NIGHTMARE

2008年5月21日に発売された、NIGHTMARE(ナイトメア)通算5枚目のフルアルバム。

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評価(基本そのアーティスト内での評価)

★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。



01 パンドラ
…★★★☆
咲人作曲。ギターのアルペジオから始まる、アルバム導入に相応しい世界観を持った楽曲ですね。
英語のよう流れるような歌唱法をしたAメロが、何処と無く異国の雰囲気が出てて良い味出してます。
そこからのスケール感のある壮大なサビが気持ち良い。
サビ開けの間奏も中々にセンスのあるアレンジだなぁと。
ヘヴィなサウンドで、演奏時間も3分と短いながらも聞き応えのある1曲です。
歌詞はパンドラの箱をモチーフとしているようです。
昔からギターの柩がよくお気に入りの楽曲として挙げる事も多く、後に発売された柩セレクトのベストアルバムにも収録されてます。


02 DIRTY
…★★★☆
RUKA作曲シングル。表記はありませんがシングルにあったイントロがカットされていて、前の曲から間髪空けずにスタートとするという勢いの感じさせる流れに。
個人的にこうゆうアルバム収録に当たっての仕様変更はテンション上がるので好きです。
ナイトメアの数あるヒット曲の1つですね。
アニメ「魔神探偵脳噛ネウロ」の主題歌だった事もあり、国内外問わず上位にメジャーな曲じゃないでしょうか。

仄かにパンキッシュな香りもする、王道ハードVロック。
ハードな演奏とサビでガラッと空気の変わる転調が印象的で、短いながらに飽きさせない展開が詰め込まれてます。
柩によるデスボコーラスも良い味出してるし、咲人による伸びのある高音ギターソロなんか最高にイカしてますよね。
そして黄泉の巻き舌多めで太めのボーカライゼーション。
最高ですよ…やっぱ歌声はこの頃が一番好きかもなぁ。。


03 the LAST SHOW
…★★★☆
RUKA作曲。アルバムのリードトラックでMVあり。
生のスカを導入した初の楽曲であり、トランペットやホーンによる音色が主体となっています。
軽快なリズムと華やかなサウンドに、タイトル通り「ショー」を見ているかのような気分にさせられてくれますね。

発売当時「これシングルにしても売れたんじゃ?」という声も少なくなかった程にキャッチ-でシングル曲っぽい。
そもそもこのアルバムのコンセプトが
"シングル曲に負けないアルバム曲を"だったらしいですが、この楽曲が一番その目標を達成出来ているのではないでしょうか。
男女の恋模様を映画や舞台に比喩した歌詞も、サウンドに見事にハマっていて印象的です。
楽曲のサウンドやコンセプトにこんなにマッチした歌詞を書けるRUKAさんは本当に天才だと思います。
ちなみにこの頃からRUKAさんの眼帯ブームが始まりました。笑


04 TrickSTAR
…★★★☆
RUKA作曲。前の曲からの流れもあってか、何処と無くアダルティな香りを漂わせる大人なロックナンバー。
疾走感のあるドラムがフェードインして曲がスタートするというのも新しい。
僕は英語は詳しく分かりませんが、サビでのYOMIさんの英語の発音が格好いくて癖になります。
そして相変わらず咲人さんによるギターは、然り気無くテクニカルなフレーズを奏でる咲人さんも流石です。

全体的にメロディアスで格好いいですが、シングルとして切るには少々インパクト不足な気もしないでもないような…(コンセプトにケチをつけて申し訳ない)

間奏で時計の秒針の音が入るのはLUNA SEAの「ROSIRE」のオマージュでしょうかね?
ラストの「幸せって言葉に虫酸が走った」というフレーズはRUKAさんも自画自賛してたくらいですし、インパクト抜群で僕もかなり好きです。


05 メビウスの憂鬱
…★★★☆
咲人作曲。「DIRTY」のカップリング曲であり、ライヴでも定番曲となった「惰性ブギ-」の続編です。
ピアノも導入されたシャッフル調の曲。
とは言っても00年代に流行った感じのありふれたものとは違って、身体が動きつつも大人で落ち着いた雰囲気なのが良きです。

各セクションごとにリズムパターンが変わる展開が凝っていて、ワンパターンにならないドラムフレーズが面白い。
ロディアスで耳に残るフレーズを奏でるベースといい、
この楽曲ではリズム隊が中々良い仕事をしてます。
Ni~yaさんはこの手のタイプの楽曲を得意としてるイメージがありますね。

ちなみにファルセットを巧みに使ったジャジーなサビメロは歌うのが難しそうな気がします。いつかカラオケでチャレンジしてみます!笑

「惰性ブギ-」のイントロ頭のフレーズを巧みに流用したアウトロで幕を閉じるのも、2曲の繋がりを上手く演出しており、流石としか言いようがないです。


06 このは
…★★★☆
RUKA作曲のシングル。ピアノによる独奏からスタートする、シングルでは珍しい切ないバラードソング。
「DIRTY」と並んで2ヶ月連続シングルの1発目でのリリースでした。ナイトメア初の日本武道館での初披露だったのが印象深いです。

MVでも表現されているように、歌詞でも学生時代の恋模様を振り替えり感傷に浸る心情が描かれています。
落ちサビ後の転調がまた切ないこと。
大サビ終わりの「舞い散る~冷たい花ぁぁぁぁ…♪」の伸びと声量のあるボーカルが素晴らしい。
この時期ならではの黄泉さん節炸裂でツボなんですよね…。
肌寒い秋に聴きたくなる、ほろ苦く感傷的な1曲。
ちなみにMVの演奏シーンでは、メンバーのレアなすっぴん姿が見られます。


07 レゾンデートル
…★★★☆
咲人作曲シングル。アニメ「CLAYMORE」のOPテーマ。
王道ハードVロックなキラーチューン。
"存在理由"を意味するフランス語タイトルです。
ヴィジュアル系はこの言葉好きですね。
deadmanDIR EN GREYがこっちをチラチラと見ている気がします。笑

歌詞はタイトル通り自分が生きる意味を問うメッセージ性の強い内容となっており、僕もかなりツボです。
オリコン週間3位という記録も残してますし、この曲も彼らの代表曲の1つと言えるのではないでしょうか。
ハードなギターリフにユニゾンするスラップベースが耳に残りますね。グルーヴ感がとても格好いい。
ロディアス且つ、ソリッドな演奏のお陰でハードさとキャッチーさのバランスは丁度良い塩梅だと思います。
ラストの黄泉さんの高音は流石。
カラオケで歌う際はしっかりと決めたい所ですね!


08 WORST
…★★★☆
RUKA曲。ライヴ定番曲だった「HATE」とインディーズ時代の「華談」の兄弟曲であり、このWORSTは末っ子。
3曲共通してハードロックナンバーです。
特に「HATE」との繋がりは柩さんによる英語のコーラスを聴けば誰しも納得するでしょう。
WORSTは末っ子の癖に3作の中でもピアノやスカも入っていて一番豪華で贅沢な使用となっております。笑

歌詞はRUKAさんらしく反骨精神が溢れる、皮肉な内容となっております。
金や権力に取り憑かれ、本来あるべき心を無くした者達へのアンチテーゼでしょうかね。
ナイトメアは意外にも風刺的な歌詞が多く、その時代に適した言葉をズバッと歌ってくれるのが気持ちいいんですよね。
生きていれば色々とあるので、僕も様々な事柄に対して思ってますよ。
「ほらよく見てみろ、くだらねぇ」って。笑


09 ジャイアニズム
…★★★☆
黄泉詞咲人曲。インディーズ時代から続く"ジャイアニズムシリーズ"の第8作目となります。
罰と書いて「ハチ」と読ませるのが面白い。
サビから始まるキャッチーなハードロックナンバー。
ジャイアニズムシリーズの中では比較的聴きやすいのではないでしょうか。複雑な展開や、よりダークでハードな楽曲が並ぶ中、一番ストレートな格好良さを持ったナンバリングだと思います。

Aメロでラップっぽいパートがあったりと、実験的で新鮮な要素もあるのだけど、安定感のある彼らのメロディセンスにより、王道な楽曲として纏まっている印象です。
中盤ではクリアなサウンドが耳に残る、スラップによるベースソロもあり。
ギターソロではトーキングモジュレーターという特殊なエフェクターを使用していて、独特な音色が楽しめますよ。
歌詞は黄泉さんがダイエットを通じて感じた事が元になっているらしいです。笑
当時、フールズメイトという雑誌の中でダイエット企画をやっていたのを覚えています。笑
確かPlastic Treeの有村竜太郎さんやMUCCの達郎さんなど、様々なヴィジュアル系ミュージシャンに応援されていた記憶があります。笑



09 ジェネラル
…★★★☆
咲人曲。重苦しいイントロから始まる、ヘヴィなハードロックチューンです。アルバムの中で最もギターのチューニングが低く、ナイトメアの中でも特に重めなサウンドになっていて、ゴリゴリの重低音が気持ちいい。
当時、「少し音色がthe GazettEっぽさを感じるな」と思ったのが懐かしいなぁ。
エフェクトが掛けられたボーカル、対話のように描かれた歌詞といい、かなりシリアスな世界観。
メッセージ性の強い歌詞には共感する人も少なくないのでは?と思います。
何かと埋もれがちな楽曲ですが、活動休止ライヴで久しぶりに演奏された事が印象深いですね。
これから陽の目に当たる機会が増えて欲しいなと思う1曲。


10 White Room
…★★★☆
先行配信シングルの咲人曲。
楽器陣によるヘヴィでキレのあるサウンドに、ピアノの音色が引き立ったミディアムテンポの楽曲。
次々と場面が移り変わるような複雑な楽曲展開は流石。
イントロの黄泉さんによる囁きも格好いいです。

始まりから終わりまで一瞬足りとも気が抜けない隙の無い緊張感を持った楽曲で、個人的に聴く際は未だに背筋が伸びる感覚です。
ディレイを使ったギターソロ、タイトな高速ドラムといい演奏も聴き所満載。
そして一番の盛り上がりはラスト大サビではないでしょうか。主メロの裏に異なる歌詞とメロディを歌ったパートが追加されるクライマックスが堪らない。
ここを初めて聴いたときには鳥肌が立ちましたよ…。
もっと評価されてほしい楽曲ですね。

ちなみに歌詞は有名な「木綿のハンカチーフ」に対するアンサーソングのつもりで書いたそうで。
つまりは都会に旅立った男性側の目線で描かれているいう事ですね。


11 cloudy dayz
…★★★☆
RUKA曲。「このは」のカップリングです。
彼ら史上、初の日本武道館での披露が未だに記憶に新しい。
秋や冬の凍えた空気が漂う、疾走感のあるキャッチーな楽曲です。
展開1つ1つがとてもドラマティック。
肌寒い木枯らしの中、独り物思いに更ける男性が浮かぶような、何処と無く哀愁漂う雰囲気がドツボです。笑
比較的ポップでメロディも明るめに聴こえるのに、歌詞のせいか物凄く切ないんですよ。
「あの頃思い描いた夢の答え」が最後には「一度は失いかけた夢の答え」になる辺り、本当はまだ諦めてないんですよねこれ。
感傷的になりたいときによく聴く一曲です。


12 夜想曲
…★★★☆
咲人曲。アルバムラストを飾るエンドロール的な役割を担う壮大なバラード。星空を連想させる綺麗なアルペジオに、涼しげなアコギの音色が重なり、更にそこに温かみのあるメロディアスなベースが入ってくるイントロが本当に素晴らしい。
そして幻想的な空気から一転、そこにドラムが入ってからの力強さがまた堪らないんですよ。

サビでのYOMIさんの伸びやかな歌唱も、この楽曲に更なる広がりを持たせてくれている気がします。

ナイトメアの楽曲の中で結婚式で流す曲を選ぶとしたら、この曲を選ぶ方も少なくないのではないでしょうか。
そのくらい彼らの中ではストレートな王道バラードです。
決して明るいだけの、めでたしめでたしの内容ではないのだけど、楽曲が放つエネルギーがポジティブというか。
真っ直ぐに聴き手に伝わる黄泉さんボーカルだからこその感動が涙を誘います。
この曲でアルバムを締められたら、そりゃいい作品を聴いたなって気分にさせられますよ。
名バラードと言いたいですね!



総評
シングル曲や個性的な楽曲も多く、幕の内弁当的な豪華さがあるアルバムだと思います。
捨て曲もないですし、ナイトメアの楽曲が好きな人ならすんなり全曲気に入るのではないかと思います。
ただ唯一の不満点と言えば、1からの流れで聴く事で得られるカタルシスやトータルでの世界観といった観点から見ると平均点をあまり越せていないのかなと思う部分もあります。
シングルカット出来るような曲だけを集めればアルバムとして良い作品が上がる訳ではないと、L'Arc~en~CielのTETSUYAさんが仰ていたのを思い出します。
「全曲まるでシングル曲」というコンセプトが逆にアルバムとしての流れや深みを欠かせてしまったという見方も出来なくはないのかもしれません。

ですが、総合的に見てクオリティは十分過ぎる程だと思います。
全曲評価のバラつきが無く、どの曲もお気に入りになれるポテンシャルを持ったフルアルバムはそうそうありませんよ。
ナイトメアの比較的有名なヒット曲も収録されていて、これから彼らを知りたい初心者にも持ってこいだと思いますね。
同時に、良質で良い歌を作るヴィジュアル系が聴きたい層にもオススメしたい1枚。トータル85点です。


★★☆…良盤