ヴィジュアル系音源レビューという名目の戯れ言。

ヴィジュアル系、又はそれらと親和性の高い音楽CDの出来損ないレビューです。失礼なことも敢えて平気で書きますが完全に小僧の戯れ言なので気にしないで頂けたら幸いです。

SINNERS-no one can fake my bløod-/lynch.

2018年4月25日に発売された通算12枚目のアルバム。
2017年に発売されたミニアルバム「SINNERS-EP」にシングル「BLØOD THIRSTY CREATURE」の収録曲を追加し、ゲストベーシストによるベースを復帰した明徳により撮り直し&再MIXをした1枚。

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評価 (基本そのアーティスト内での評価)
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。


01 SIN
…★★☆☆
exギルガメッシュのRyoが携わった、テンション爆上げSE 。ヘヴィなギターサウンド4つ打ちのEDMが融合したライヴの入場に打ってつけな曲ですね。合間に入るvo葉月によるシャウトや女性コーラスが雰囲気出してます。

 
02 SORROW
…★★★☆
「SINNERS-EP」ではラストに配置されていた楽曲が、今作では実質1曲目を飾るという形でのスタート。
復帰した明徳を含めた5人のlynch.としての覚悟を感じさせる始まりになっている気がします。
今作をリリースするにあたってMVが製作されましたね。
冒頭の歌詞通り、夕立や夜空が似合う悠介作曲のメロウなバラード。
とは言っても「THIS COMA」や「FAREWELL」のように幻想的な音色を主体に淡々と進んでいくタイプではなく、演奏やボーカルにも力強さを感じさせ、パワーバラードのような捉え方も出来るかな。
EPでのベースを担当していたMUCCのYUKKEによるフレーズを崩しすぎず、明徳ならではのテイストも感じさせるベースラインも中々深みがあって良いですね。
ひとり黄昏て聴きたい一曲。


03 BLØOD
…★★★☆
ギターのノイズから雪崩れ込むような葉月のキレ味抜群のシャウトで聴き手の心も一瞬で暴れモードへと早変わり。ヘヴィかつ疾走感のあるメタルコアナンバーです。
彼らの中では比較的爽やかめでキャッチーとも言えるサビメロと交差するようなシャウトコーラスの対比が格好いい。
「BLØOD THIRSTY CREATURE」ではこの曲をリードトラックにする予定だったんだとか。
結果インパクトのある「CREATURE」を表題曲に選んで正解だったと僕は思っています。
この曲は2分強という短い時間であっという間に駆け抜けて終わる潔さも良いですね。
余談ですが、僕はランニング中に良く聴きます。(笑)


04 BLACK OUT DESTROY
…★★★☆
冒頭いきなり間を空けずに「YEAHー!」というテンション高めのシャウトから始まります。
早めのテンポの演奏に葉月のシャウト→テンポダウンしてメロディアスなサビ
というベタな展開なのですが中々に格好いいんすわ…。
サビでは英語のように聴こえる歌唱法をしていますが日本語詞なのが面白い。
DIR EN GREYの京が海外進出後に、英語を使いがちなメロにも日本語を使用する事に拘るようになって以降、ヴィジュアル界ではハードな楽曲でも日本語使うバンドが多くなってきた気がする。
個人的には英語ばかりで在り来たりな洋楽被れなバンドがつまらないと思ってしまうのでむしろ嬉しい流れです。
EPでの人時(黒夢)のベースも貫禄を感じられ流石でしたが、明徳のテイクもうねるようなグルーヴで好きっす。


05 KALEIDO
…★★★☆
定期的にやってくる歌謡シリーズ第●段!!って感じのメロディアスでキャッチーな楽曲です。
葉月がTwitterでアニメのタイアップを狙っていたと発言していた通り、メロディも覚えやすいんですよね。
星空や太陽に煌めく真っ白な雪を連想させる、みんな大好きな悠介によるイントロのディレイフレーズが美しい。
ベースラインについては個人的にEPでのPay money To my PainのT$UYO$HIによるテイクがツボで。
2番Aメロのゴリゴリに攻める感じや大サビ明けのスライド音とか堪らなく好きだったんですよね…。
綺麗で繊細な世界観の楽曲なのにここまでゴリゴリ行きますかってくらい存在感があって。
それ故に明徳verは中々馴染めなかったのですが、これはこれで味を感じられるようになりました。
要は完全に好みの問題ですね。(笑)

歌詞は亡くなった者への、残された者側の気持ち。
過去の思い出を振りほどけず、悲しみに立ち止まる事も少なくない毎日。
「ああ それでも忘れゆくよ 僕らは生きてくんだから ちょっと寂しいでしょ?」
この言葉を歌詞にするのが生々しくていいですよね。
大切に死者を想い忘れないと心に決めていても流れ行く日々の日常の中で忘れていくんです。
それはマイナスな意味だけではなくですよ。
そんな人間の身勝手な心こそが弱さであり生きる為の強さなのかもしれません。


06 THE WHIRL
…★★★☆
不気味なSEと楽器陣の重低音サウンドで幕を開けると、一転して静かになり囁くようなボーカルからのシャウト&台詞!からの広がりのある伸びやかなサビという構成。
目まぐるしく展開してゆくシリアスで不穏な空気を纏った楽曲です。ミディアムテンポなのだけどヘヴィな演奏と緊張感のあるダークな雰囲気のお陰でハードな印象が強い。
実はこの曲、インディーズ時代にリリースされた楽曲で、3度目の再録になります。
ベースのテイク違いも合わせると4パターンですね。
最近のlynch.の持つダークさとは違った空気感を持つ曲ながら、今のlynch.にも違和感なくハマってます。
むしろ当時のテイクと比べるとかなり凶悪になり、各パートの表現力も随分と進化していて見違える程格好いいです。


07 CREATURE
…★★★☆
「BLØOD THIRSTY CREATURE」のリードトラック。
お経のようなリズムをヴィジュアル系チックに囁くAメロが印象的なダークなラウドロックです。
ここ、「我無雅吽 割レル喝采ト共鳴 感染症ノ崇拝ト生
邪無蛇吽 溢レル天性ノ強欲 体内巡ルENDLESS GREED」
と歌っているのですが、漢字と片仮名オンリーの表記は最早ヴィジュアル系の受け継がれし文化のようなものです(笑)
本人も確か90年代のV系LUNA SEAの「IN FUTURE」へのリスペクトを込めたオマージュって言ってなかったっけかな。

キメの多いリズムや展開など、既存曲にありそうでなかった新鮮味がある曲だと思います。
そしてシャウトパートのキレの良さたるや…。
シャウトパートからの激しさも残しつつ、流れるような余裕のあるサビもクールで格好いい。
年数を重ねて自信を付けたからこその貫禄のようなものを感じる一曲。


08 DIES IRAE
…★★☆☆
出だしのドラムによる「シャンシャン…ドドドドドドドド!」はこれ完全にLaputaの「泥~IN BOG…IN WORST~」を意識しただろって思っていたら本当にそのつもりらしいです(笑)
BPM200越えの高速ツタツタナンバー。
がなり声とシャウトのみで駆け抜けていくハードな楽曲で、ライヴでは間違いなく暴れ曲担当ですね。
シャウトの出し方が何処と無く昔ながらのヴィジュアルシャウトを感じる。
あとギターのチョーキングが印象的に使われていて良き。


09 TRIGGER
…★★★☆
EPではLUNA SEAのJがベースを勤め、MVにも出演した事が話題となったメロディアスな王道ハードロック。
EPではSE除く1曲目というトップバッターでしたが、今作ではトリを飾るという配置に。
この配置で聴くと明徳の復活で再び狼煙を上げたぞっていう反撃開始のような楽曲にも聴こえてくるんです。
アルバムは曲をどう配置するかによって、それぞれの楽曲の持つ役割や印象もガラっと変わるから面白い。
楽曲の持つ力強さやエネルギー、そして歌詞に含まれる「月」というワードといい、EPでのJによるベースがとてもこの曲にハマっていたので、明徳はハードルが高かったと思われますが彼らしい音色で別の良さを引き出してくれました。
中盤ではツインギターによる掛け合いのソロもあり、時代に左右されない普遍性のあるストレートなVロックチューンに仕上がっています。

辛い過去や痛みも受け入れ、それでも尚未来に向かっていくような、気持ちが熱くなる楽曲です。



総評
★★☆…良盤
「SINNERS-EP」 「BLØOD THIRSTY CREATURE」を持っていない方にとってはお得なベストアルバムといった捉え方も出来る1枚ではないでしょうか?
どちらも持っている人にとっては少々コレクター要素が強くなる面もありますが、1枚の中で流れや纏まりが良いのでフルアルバムとして聴けるのは強みになるはず。
僕は上記の2枚も持っていますが、この作品をフルアルバムとして聴く事のほうが断然多いです。
全曲ダレることなく聴けて各楽曲のクオリティも申し分なし。
lynch.に興味がある方にとっての入門としても悪くないのではないかと思います。
総合評価は87点です。