ヴィジュアル系音源レビューという名目の戯れ言。

ヴィジュアル系、又はそれらと親和性の高い音楽CDの出来損ないレビューです。失礼なことも敢えて平気で書きますが完全に小僧の戯れ言なので気にしないで頂けたら幸いです。

Imperial Concerto/LAREINE

2006年3月26日に発売された、LAREINEのベストアルバム。
2004年の復活後にリリースされたシングルを全て収録したシングルコレクションです。

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評価
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。


01 Imperial Concerto
…★★★☆
2004年にヴィジュアル系雑誌、SHOXXによる通販にて販売された「女王という名の貴公子」という十周年記念ヒストリーブックに付属していたCDに収録されていた1曲。
KAMIJO作曲の哀愁シンフォニックロックとでも言いましょうか。
上品なストリングス風シンセから始まり、MAYUの激しくも哀しいメロディアスなギターが重なるイントロの時点で、もう既に優勝。笑
とにかく展開がドラマティックで、後期LAREINEの名曲の1つです。

歌メロはゆったりとしているのですが、演奏陣のプレイは激しめで、出るとこは出るというスタイル。
特にギターの分厚いサウンドが格好いい。
KAMIJOの作る曲は例外なく言えるのですが、この曲もとにかくメロディが綺麗で切ない。
歌詞は、幻だと分かりながらもそれを追う事でしか生きられない哀しみや切なさを描いています。
一見すると愛する者への気持ちにも解釈できますが、この歌詞の中の「貴方」とはKAMIJOにとっての音楽や理想そのものなんだとか。

2015年にソロのKAMIJO名義でこの曲をリメイクしているのですが、そちらはメタル要素が色濃くなりKAMIJOの歌声も力強いものとなっています。
そちらもかなりの完成度を誇るアレンジが施されているので、是非チェックしてみてほしいですね。


02 蝶の花
…★★★★
メンバー3人の衝撃の脱退後、KAMIJO1人でLAREINEを存続し、シングルとアルバムを1枚リリースしましたが、その後、やむなく活動休止をする事に。
そんなLAREINEの復活第一弾となったシングルが、この「
蝶の花」。
一人LAREINEでリリースされた楽曲群は、かつての華やかさや耽美さは影を潜めていましたが、この曲ではファンのイメージするキラキラとしたLAREINEを堪能出来る仕上がりになりました。
ポップでいながら上品でメロディアス。
蛹から綺麗な蝶へと生まれ変わってゆく歌詞の中には、「再会の花」というメンバーとファンを繋ぐ代表曲のタイトルも入っているという、復活を告げる1発目の曲としてはこれ以上に無い程の仕上がり。
楽曲を彩る煌びやかなMAYUのメロディアスなギターフレーズ、耳を引くEMIRUのベースライン、タイトで華麗なMACHIのドラミングがそこに加われば、それは他の誰も真似できないLAREINEワールド。

1曲目同様に、2015年にKAMIJOのソロによりリメイクされましたが、欲を言えば陽の目を浴びていない原曲を一人でも多くの人に聴いてもらいたい。

この時代、この瞬間だからこその空気感や、ポジティブなエネルギーの詰まった名曲です。


03 Scarlet Majesty
…★★★☆
MACHIの後任ドラマー・KAZUMI加入後、初の参加となったKAMIJO作曲のシングル曲。
後に描かれるコンセプト作品のスタート的なポジションで、異国感を感じる音色や広大な大陸を思わせるアラビアンなAメロなど、これまでのLAREINEには無かった毛色のアレンジが施されています。
愛する女性との恋を星座に比喩した歌詞は秀逸。
大サビの展開が切なくて胸を締め付けますね。
メロディや音色からも、星空や夜空を連想できる仕上がりになっています。
どんなテイストもロマンチックな世界に落とし込むKAMIJOの才能とメンバーのアレンジセンスは流石としか言いようがないですね。

余談ですが、KAZUMIにとって最も印象深い楽曲はこの曲なんだとか。


04 眠れぬ恋は真珠
…★★★☆
シングル「Trailer」に収録された、KAMIJO作曲のスローバラード。
ストリングスのようなシンセとピアノの音色がフィーチャーされていて、しっとりと聴かせるタイプの楽曲です。
淡々とリズムを刻むドラムと、地を這うようにうねるベースラインがボトムを支える本楽曲は、ギターサウンドは一切無し。

歌詞は珍しく、人間の汚さや世界中で巻き起こる争いに憂い嘆く内容となっていて、とてもシリアス。
命の大切さを感じ、周りに流されず自分の信念を貫いて生きる事への覚悟も感じられ、メッセージ性の強い歌詞となっています。
平和への祈りを込めるようなKAMIJOの優しい歌い方がメロディや世界観にも合っていて、まるでレクイエムのようにも聴こえてくるから不思議です。
ラレーヌ時代のKAMIJOのボーカルは好き嫌いが分かれますが、この歌声だからこそ、切ないロマンスを描くラレーヌの世界観が成立しているのだと思います。


05 Trailer
…★★★☆
MAYU作曲による疾走感のあるメタルチューン。
冒頭シンセ後のメタリックなギターリフが堪らなく格好いい。
スウィープ等のテクニカルなギタープレイの他、然り気無くドラムのツーバスもドコドコ鳴っており、メタル好きにとって満足度の高いイントロとなっています。
長めのギターソロも用意されていて、勢いを落とさないまま駆け抜けていく楽曲構成も良き。

主張した激しい演奏と、メロディアスな優しいボーカルとの対比はラレーヌならでは。
"ボーカルが弱い"と捉えてしまうのも間違いではありませんが、このアンバランスなバランスがLAREINEのメタルチューンとしてのベストだと、僕は捉えています。

「ひび割れた鏡」「鳥かご」「少女」「鉄格子」など、所謂ダークな音楽性のヴィジュアル系バンドが使いそうな言葉選びをした歌詞はラレーヌでは少し新鮮ですね。


06 再会の花
…★★★☆
インディーズ時代からライヴのラストを飾るMAYU作曲の定番曲を、現メンバーでリテイクしたもの。
おそらく5度目のレコーディングテイクなはず。
大胆なアレンジは無いにしても様々なヴァージョンがあるので、些細な歌い方の違いやフレーズの変化はあり、どのテイクが好きかは完全に好みと思い入れで異なってくるでしょうね。
ちなみに僕は2003年にシングルとして発売した際のテイクが一番好きです。
ですがそのテイクはテンポがちょっとゆったりし過ぎていて、幸福感と共に若干の間延び感も感じてしまうのですよね(笑)

あとアルバム内でこの順番にこの曲を配置した意図がわかりません(笑)
でも楽曲そのものは普遍の名曲です。


07 レッスン
…★★★★
「愛を込めて、レッスンを」という冒頭の台詞の後に続く、ドラムのフレーズがインパクト大。
KAMIJO作曲の哀愁歌謡メタルチューン。
勢いと疾走感のあるリズム隊の演奏に、クサイ程クラシカルなギターフレーズを響かせるイントロがズルい…。
この手のものが好きな人にはドストライクでしょ。
Aメロ、Bメロ、何処を切り取ってもドラマティックで、全パートサビといっても過言でない程に贅沢なメロディ。
Bメロで一度テンポを落として、そこからサビで再び加速させる緩急のある展開も素晴らしい。

そしてラストの大サビでの転調は反則でしょう…。
主旋律に絡み付くような泣きのギターがツボでツボで…。

歌詞の、ピアノと五線譜を擬人化したような表現は全ジャンルの中で見ても斬新なアイデアではないでしょうか。
KAMIJOの作詞・作曲の才能は本当に図り知れませんよ。

謡曲のような綺麗で哀愁を帯びたメロディと、激しいメタル調な演奏の融合といった意味では、個人的には1つの理想系。

もっと多くの人に届いてほしい名曲です。


08 月の狩人
…★★★☆
こちらもシングル「Trailer」から。
KAMIJO作曲のナンバーなのですが、これがまた彼らの中では物珍しい楽曲なのですよ。
疾走感のあるメタリックな演奏の上でKAMIJOが紡ぐメロディは、なんと和風!
フランス、パリ、延いては「ベルサイユの薔薇」とも親和性の高い音楽性で活動しているバンドにとって、これは1つのチャレンジ。
結果、穏やかさを持つ和のメロディとKAMIJOの優しげな歌声との相性が良い事で違和感は少なく、むしろ激しめのアプローチの楽曲の幅を広げマンネリ化を防ぐ機能を果たせたのではないでしょうか。
何処と無くですがサビのメロディ、和を軸としたバンド、Kaggra.っぽさがあるような気がします。
一志が歌っても違和感なくハマるのでは。


09 雪恋詩
…★★★★
EMIRU作曲によるウインターバラード。
始めに言っておきますが、個人的に00年代にリリースされた全バラードの中で間違いなくTOP10入りします。
好き故に痛々しい文章になる可能性がありますが多目に見てやってください(笑)

しんしんと雪が降る夜に聴きたい、痛いほど切ない失恋を歌った1曲。

ゆったりとしたオルゴールでスタートし、始まるのはストリングスとピアノによる演奏。
その音色に寄り添うようにしっとりと歌い上げるKAMIJOのボーカルが、凍てついた冬の空気感を表現。
1番はピアノによる独唱で、サビ終わりから本格的にストリングスが入り、ベースとドラムも加わります。
2番のサビ前からギターが重なるのですが、その瞬間の然り気無い盛り上がりもツボ。
言葉は聞き取りにくいですが、間奏ではピアノによる旋律の裏でKAMIJOによる語りも。
その後のCメロ→落ちサビ→転調する大サビという展開は、正しくバンドコンセプトでもある"究極の期待通り"。

とにかくメロディが切ない。
各パートごとにゆっくりと盛り上がり、ラストの転調を迎えた時には涙無しでは聴いていられませんよ。

海外のファンからの評価の高く、間違いなく後期LAREINEの代表曲の1つ。

とはいえ、復活後にリリースされた楽曲はメジャー時代と比べセールスや知名度がとても低いです。

この曲に限った話ではないですが、全盛期よりも更にクオリティの上がった曲達が陽の目を浴びなかったというのは非常に残念な話です。

数々の冬ソングが存在するバンドですが、改めてその中でも特にオススメしたい珠玉の名バラードだとここに記述させて頂きます。


10 ドラマ
…★★★☆
「さくら」と両A面シングルとして発売されたKAMIJO曲。
線路を走る汽車の音と汽笛によりスタート。
この音を聞くと、メジャー1stアルバム「フィエルテの海と共に消ゆ~THE LAST OF ROMANCE~」に収録されていたインストゥルメンタル、「retour」を思い起こしますね。
キラキラとしたシンセとアコースティックギターの音色が印象的で、ワクワクするようなテンポ感を持ったイントロとサビが新鮮です。
「初雪が舞い散る頃」と歌詞にあるように、雪が積もった真冬の景色よりも、12月初頭くらいの空気感がしっかりと醸し出されています。

恋の回想をドラマに見立てた歌詞も秀逸。
KAMIJOの描く詩はどうしてこうもロマンティックで切ないんだろ。

MVも作られていない為、全体的にマイナーな後期の中でも特に知られていない曲なのが勿体無いくらいのクオリティをもった楽曲です。


11 道化師の舞曲
…★★★☆
歌詞、曲ともにMAYUによるシングル曲です。
パイプオルガンの音色がフィーチャーされたアップテンポな楽曲。
「踊れ踊れ道化師達よ」と歌うサビメロがキャッチーで耳に残り易いです。
さすがMAYUによる楽曲らしく、主張したハードなギターが格好いい。
サビで鳴るハモりのギターフレーズは、同じくMAYU作曲の「白い糸」のアウトロのソロを彷彿とさせますね。

骨太ながらに疾走感のある演奏が格好いい曲なので、籠りのないクリアな音質で聴いてみたい。
このアルバムごとリマスタリングして発売してくれないかなぁ…*1


12 Cinderella Fantasy
…★★★☆
KAMIJOによるポップで華やかなシングル曲。
何処と無くパレードを思わせるシンセが前に出たサウンドで、他の楽曲に比べロック感の薄い印象を抱かせます。
歌詞はストレートなラブソングなのだけど、ギターソロの後にはハンドクラップの音も入るなど、ファンタジックでお上品なパーティーソングっぽさもあるかな。
こんなにもハッピー感の漂う楽曲はLAREINEの中では珍しいですよね。
大サビでは転調し、より幸福感を増してゆく展開も。

良曲なのだけどインパクトには欠ける、惜しい感じのする1曲です(笑)


13 さくら
…★★★★
作詞作曲MAYUによる、ミディアムナンバー。
タイトル通り、温かな陽射しや卒業時期の空気感を感じさせる春ソングです。
イントロが秀逸で、ボーカルが歌い出す前から既に名曲確定。
冒頭のディレイの掛かった綺麗なギターサウンドから、シンセやリズム隊が重なり、段々と盛り上がってゆく展開が素晴らしい。

歌詞は亡くなった愛する者への気持ちを綴った内容。
サウンドやメロディが醸し出す通り、歌詞の主人公の愛する人への想いも深く優しいのですよね。
楽曲の持つエネルギーやメロディは明るく希望を感じさせるのに、歌詞は堪らなく切ない。
それを穏やかに優しく歌い上げるKAMIJOのボーカルと、泣きまくりのMAYUのギターで表現するんだから名曲にならない訳がないでしょう。
EMIRUによるメロディアスなベースラインも、琴線に触れてくる。

そして大サビ最後の展開もとてもドラマチックで、つい涙を誘われます。

こんな名曲が埋もれてるんですから。
ヒットチャートなんて⚫喰らえですよ!笑

日本には桜と題したヒットソングが沢山存在しますが、その中でも自分にとっては何よりも大好きな楽曲です。


14 Vampire Romance
…★★☆☆
LAREINE、NEW SODMY、RIBBONの3組によるオムニバス作品、「VAMPIRE ROMANCE」に収録されていた曲のリテイクverです。
イントロもカウントも無く唐突に曲が始まるので、前の曲の余韻を容赦なくぶち壊してくれます。笑
オリジナルアルバムではなくシングルコレクション、そしてこの楽曲がボーナストラックとしての収録という事実を踏まえた上でも、この唐突な流れはどうにかならなかったものか。笑

ハードなサウンドに、吸血鬼をテーマにした歌詞。
珍しくロマンティックで切ない要素が影を潜めている楽曲で、悪くないけど華に欠ける印象。

似た系統の曲の中でも、「SCREAM」に収録されていた「Miss Carmila」の方がメロディにメリハリがあって好きですね。
演奏はこちらに軍配が上がるけども。

それでも収録元のオムニバスは所持していないので、このアルバムでの収録は嬉しい限り。



総評
シングルの寄せ集めとはいえ14曲中、8曲が他アルバム未収録で、どれも廃盤となっており現在は入手困難。
なのでこのアルバムを買えばお得ですよと一口に言ってしまいたいのですが…
なんせこのアルバムの方がそれらのシングルよりも今では希少価値が高く、購入が極めて困難な上に、プレミア価格が付いていて値段が物凄く沸騰しています。
僕が先日Amazonで値段をチェックしたら15万円という、CDとは思えない程の金額で腰を抜かしました。(笑)
なので、ほぼ現在このアルバムを入手するのは不可能です。
そんなアルバムを人に進めるのは如何なものなのかと自分でも思うのですが、そんな思いが消し飛んでしまう程に素晴らしい作品なのです。

陽の目を浴びなかった後期LAREINEですが、リリースされた楽曲のクオリティは間違いなく全盛期を越えています。
改めてシングルを並べて聴いていると、これらの楽曲が評価されなかったのは勿体無さすぎて悔しくなってくる程です。

セールスや知名度と相反して、収録された楽曲はどれも名曲揃い。
"色褪せない"とはこの事。
レビューを書くにあたって一度アルバムを聴き直したのですが、
切ない楽曲をやらせたら歌唱力や演奏力云々は関係なく、彼らの右に出るものはいないと改めて思いましたね。





総合点数93点。
★★★…少しでもお求め易い価格で見かけたら直ちに購入するべきですよ盤。

*1:T_T