ヴィジュアル系音源レビューという名目の戯れ言。

ヴィジュアル系、又はそれらと親和性の高い音楽CDの出来損ないレビューです。失礼なことも敢えて平気で書きますが完全に小僧の戯れ言なので気にしないで頂けたら幸いです。

色纏う人展/彩冷える

2020年3月8日に配信開始されたミニアルバム。
僕が今回レビューするのはWIZY限定のクラウドハンティングで販売されたCD音源、パッケージ版になります。

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評価
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。

01 intro
…★★☆☆
ケンゾ作曲。
WIZY限定発売のパッケージ版のみに収録されている打ち込みによるエレクトロなインスト曲。
女性の声をサンプリングしたような音声が印象的で、聴き手の期待を掻き立てるように加速してゆくテンポが気持ち良い。更にはどのタイミングで次の曲へ変わったのか分からない程、自然に次の曲へと繋がる仕組みも。
esを聴くならこちらとセットで聴く事で、より気持ちも高まること間違いなしでしょう。
この1曲があるかないかでは1枚通しての印象が変わるのではないかと思えるほど印象に残るトラックです。
改めてパッケージ版を購入して良かったと思いますね。


02 es
…★★★☆
夢人編曲のケンゾ曲。
インストの打ち込みにバンドサウンドが重なる事で楽曲スタート。リフレインを用いた彩冷えるらしいキャッチーなメロディと、ガツンと響く力強い演奏がクールなアップテンポなロックチューンです。
1曲目のインストで散々聴き手のテンションをヒートアップさせてからのこれはズルい。
彩冷えるってこんなにも格好いいバンドだっけ?っと初期から聴いてる僕ですら思ってしまいましたもん。
再結成してからも何も変わらぬ音楽性で、ファンが求める楽曲を提示し、限りなく誰もガッカリさせない復活を遂げた彼ら。
ですが間違いなく、あの頃のままの彩冷えるではない。
確実にグレードアップして進化したサウンドなんですよね。

嘆きにも似た感情を綴ったシリアスな歌詞を、今の葵の表現力で歌われたら伝わらない訳がない。
ラストサビの「誰か僕を化け物だと終わらせてよ」の、がなり気味な歌い方には鳥肌が立ちましたよ。
あとは要所要所に1曲目のインストのフレーズが顔を出す辺りも繋がりが見えて、つい興奮してしまう。
出たしからこんなにも心を掴むんですから、最初からクライマックスなミニアルバムって言いたくなります(笑)


03 積み木くずし
…★★★☆
インテツ作曲。何処と無くエスニックな香りが漂う、ミディアムナンバー。
4つ打ちのリズムに、骨太なベースと大人っぽいお洒落なアコースティックギターが鳴るAメロの空気感は彼らの中での新境地ではないでしょうか。
サビでは中華風なシンセが彩り、そして一筋縄ではいかない引っ掛かりのある和を感じさせる歌メロ。
中々にアーティスティックな楽曲ですよねこれ。
知的で哲学的な歌詞も、楽曲のイメージにハマっています。
個人的には歌詞カードを見ながらじっくり紐解いて聴きたくなる1曲です。


04 餞
…★★★☆
夢人作曲。
歌謡テイストのメロディがドラマティックなミディアムナンバー。何処と無く80年代を彷彿とさせる懐かしさを感じるメロディと色気のある歌詞がピッタリ。
彩冷えるの歴史を振り返っても、ありそうでなかったタイプの楽曲じゃないですかね。
強いて言うなら1作前のアルバムに収録されていた「前戯」と、インディーズ時代の「カナリア」を足して2で割った感じかな。
前戯のアダルティな匂い、カナリアの相手に溺れてゆく被虐さ、どちらの要素も感じられます。
この曲でも、タイトなドラムやボーカルの表現力が光ってますな。


05 トゥルリ ラルラ
…★★★☆
ケンゾ作曲のゆったりめなポップナンバー。
涼しげなアコギと、タイトルを繰り返す覚えやすいサビが印象的。
徳間ジャパンからのメジャーデビュー後の時期にリリースされていても違和感のないような"ほのぼの感"があります。
「彩-irodori-」(メジャー1stアルバム)のような明るくポップな音楽性を、現在のキャリアを重ねた彼らがやると当時よりも深みがあって良いですね。
前向きなメッセージにも仄かな毒が含まれていることによって、当たり障りの無い言葉だけでパッケージされたメジャー時代の歌詞よりも、ずっと説得力が生まれてる。

楽曲単体でのパワーはそこまででもありませんが、この流れで聴くと不思議と懐かしさと安心感を感じられて良いんですよね(笑)
メジャーデビュー当時はポップにセルアウトさせられた音楽性に不満や、思うことがあったけど、なんだかんだどの時期の彩冷えるも好きなんだな自分って改めて気付かされました。


06 supernova
…★★★★
インテツ作曲。
デジタルとバンドサウンドを上手く融合させた、疾走感のあるメロディアスチューン。
この手のサウンドは彼らのお得意ジャンルでしょう。
AYABIE時代を思わせるキーボードと、琴のような音色とのバンドサウンドの融合に"らしさ"を感じるイントロ。
そして和を感じさせるキレイなメロディと、文字数を詰め込んだサビ。
待ってました!ってくらい王道のキラーチューンですよねこれ。
彩冷えるとAYABIE時代の音楽性の融合というか、総括的な感じもします。

そして何より素晴らしいのは歌詞。
言葉数が多く、深読みが出来る奥行きを持った歌詞が特徴な今作ですが、その中でも群を抜いて刺さった歌詞がこれ。

"もしも主人公が多すぎて 物語るものがないのなら
引き出しに押し込んだその話を聞かせて
誰も自分で向かない限り、暗闇を見ようとはしない
そこに答えがある 痛みを止めないで"

"浮き沈みも数えてみて わりと好きになれる
生きてるだけで丸儲けじゃだめさ"

"もしも助けてと叫ぶのなら 必ず僕が見つけるから
荒れ狂う航海も後悔して進もう
話すな と言われたあの過去も断末魔のように叫ぼう
そこに答えがある 光は止まらない"

思わず歌詞の一部を抜粋してしまいました。
めちゃくちゃ良いこと言ってません?*1
痛みや傷を抱え、生きづらさを覚える10代から20代の若者には特に聞いてほしいメッセージ。

辛い事や汚い部分から目を背け思考を停止したまま生きるほうが遥かに楽でしょう。
でも、そこに目を向けて直視してこそ気づき、得られるモノがある。

この歌詞こそ、現代を生きる全ての人に届いてほしい。

個人的にこの歌詞と同じ考えで長らく生きてきてるので、この曲を聴いたときは思わず涙が出ましたよ(つд;)

いつか子どもが出来たら聴かせたい1曲。



総評
歌モノ5曲というボリューム面での物足りなさはありつつも、飽きのこないバラエティ豊かな楽曲群のお陰で1枚としての満足感は中々のものです。
過去にはメンバーチェンジが多く、時期による音楽性の変化などといった理由から、「この時期は好きだけどこの時期からは…」というリスナーも少なくないはず。
現代まで彩冷えるを追ってる人は勿論、そのような人達が聴いても刺さる作品ではないでしょうか。
そしてまだ彩冷えるを聴いたことのない人にアピールするにも充分なクオリティとポテンシャルを持った一枚です。

ただ、これだけ幅広い層にアピールできる作品にも関わらずCDとしてのパッケージ版はもう手に入れられないのが残念なところ。
配信という形での購入でも満足できる人ならば、今からでも遅くないので是非。

ファンとしてはそろそろ、近年更に表現力が増している葵のボーカルの表現力が光る激しい楽曲や、復活後未だ発表されていないタケヒト作曲によるナンバーが聴きたい頃。

これからのリリースにも期待大ですね。

総合点数は88点。

*1:T_T