ヴィジュアル系音源レビューという名目の戯れ言。

ヴィジュアル系、又はそれらと親和性の高い音楽CDの出来損ないレビューです。失礼なことも敢えて平気で書きますが完全に小僧の戯れ言なので気にしないで頂けたら幸いです。

BAROQUE 無期限活動休止について

長く彼らを応援してきた、そして彼らから素晴らしい音楽を受け取ってきた1人のファンとして。

少しだけ語らせてください。


2020年9月8日

BAROQUEのvo怜の引退、そしてBAROQUE無期限活動休止の発表。

僕がその発表を知ったのは22時50分頃。

脳が事実に追い付かないまま、23時から始まったGt圭による生配信を聞きました。

時折言葉を詰まらせ、涙ながらに怜さんとBAROQUEへの想いを語る彼の言葉を聞いてようやく頭が理解に追い付いてきたといいますか。

あぁ、もう2人の作品は聴けないんだなって。

怜さんからの引退を、1人の人間の判断として受け止めた圭さんは器が広く、そして仲間想いだ。

約10年前に怜さんが鬱病を患ったときの姿を圭さんは知ってる。

今回も少しでも怜がプレッシャーや負担を感じないよう、様々な事を配慮しているように感じました。

僕は怜さんが当時、そして現在どれ程辛かったなんてわからない。

それでも怜さんが書いたエッセイ、うつ病ロッカーを読んでいるからこそ、彼のメンタル面も心配になる。

昨日の怜さんへの圭さんの思いやりや優しい言葉たち。

僕も全く同じ気持ちだよ。

そりゃあね。

怜さんの歌声、言葉…
圭さんの音色、楽曲…BAROQUEの作品が大好きだからこそ、正直突然の発表でショックだったしとても寂しい。

これからの2人の作る音楽をもっと聴いてみたかった。

次に出す作品は一体どんなものなんだろう?って想像しては1人で勝手にワクワクしてたもの(笑)

それでも、この決断を決めた2人を"なんで?"とは微塵も思いません。

悩み抜き引退を決めた怜さん、怜さんやファンの事も沢山考えた上でそれを受け止めた圭さんの判断を尊重したい。

それに、彼らはこれからも何時でも彼らに会える魔法を僕らに沢山授けてくれたでしょう。

彼らの意志や魂の籠った素晴らしい作品と僕らはこれからも生きて行ける。

過去のモノになんてさせないよ。

僕らに素敵な芸術作品を預けてくれてありがとう。

沢山の人に多くの感動をありがとう。

これからの2人の幸せな未来を、心から願っています。



長くまとまりのない言葉となってしまいましたが、
最後まで読んで下さりありがとうございました。

GAUZE/DIR EN GREY

1999年7月28日に発売されたDir en greyによるメジャー1stアルバム。
21.6万枚というセールスを記録し、ディル史上最も売れたアルバムです。
ちなみに13曲全てにMVが製作されています。

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評価
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。

01 GAUZE-mode of adam-
…★★☆☆
不気味な金属音から始まるインストゥルメンタル
しばらくすると、遊園地やサーカスで流れていそうなアコーディオンによるワルツ調のメロディが流れ、vo京さんが呟き出します。
そこからバンドサウンドが重なり、ビートを早めていくといった構造のSEです。
4つ打ちのリズムにへばり尽くノイズのようなギター、効果的に狂気を演出する京によるシャウトがシニカルな空気を醸し出していますね。

序盤のチープな効果音もこの世界観にはピッタリで、盛り上がりを見せる中盤以降とも、良い対比になっているのではないかと思います。
元々はそこまで好きでも無かったのですが、2014年に行われたGAUZEツアーでのライヴで聴いて以来、結構好きになっちゃいました。
アルバムの導入としての役割はもちろん、ライヴの入場SEとしても中々優秀です。


02 Schweinの椅子
…★★★☆
Die作曲。
極太男声コーラスが映える、ハードな極悪ヘヴィロック。
スピード感のあるギターリフはスラッシュメタルを思わせるスピード感がありますね。
イントロの「Geist Seele Wille Zelle…」とドイツ語によるカウントを叫ぶコーラスには、当時の関係者などが大勢参加したそうです。

男臭いコーラスに負けじと、京さんもGeist Seele Wille Zelle!とキレ味抜群のシャウトを繰り返します。
薬、淫乱、精神崩壊と、アングラな世界を繰り広げる歌詞の世界観の通り、狂気を感じさせるメロディ展開です。
サビでは、クリーンボイスから移り変わるようにダミ声を使用したり、要所要所に早口による台詞なども効果的に取り入れて、毒々しいイカれた雰囲気を上手く演出してますね。

この楽曲も、生で聴いたmode of GAUZE?の記憶が強く残ります。
めちゃくちゃかっこよかったです。


03 ゆらめき
…★★★☆
前の楽曲の終わりから間髪入れずにスタート。
Shinya作曲による、メロディアスな王道歌謡ヴィジュアルロックチューンです。
X JAPANYOSHIKIさんプロデュースの元、3枚同時リリースとなったメジャーデビューシングルの1つ。
全体的にミディアムテンポかと思いきや、サビでは疾走感のあるビートに。
小説のようドラマチックに未練を綴った歌詞と、哀愁漂う切ないメロディとの相性が抜群ですね。
落ちサビでの、YOSHIKIさんによるピアノの演奏もかなり良い味出してます。
ピアノの音色を聴いただけで、ファンなら記載が無くても彼による演奏だと分かるような気がします。笑

数あるDIR EN GREYの楽曲の中でも、一番ストレートな王道90年代ヴィジュアルソングではないでしょうか。
彼らの中で最も売れたシングルなだけはあります。

今でもShinyaさんのお気に入りの一曲でもあるそうです。
でもこれ、改めて聴くと素直に名曲ですよね。


04 raison detre
…★★★☆
Toshiya、Shinyaによる共作。
ダンサブルなノリのいいサウンドで、後により難解な音楽性となってゆくディルの中では珍しいタイプの楽曲ですね。
縦ノリなベースラインが耳に残ります。
MVでは裸の女性が自らの目をくり貫くシーンがあったりと過激な映像が含まれていますが、楽曲自体はシャウトもなくメロディアスでキャッチーです。
Dieさんお得意のカッティング奏法や、薫さんによる王道なギターソロもあり。
ディルだから埋もれてるけど、他のバンドならもう少し人気曲にもなれたんじゃないかなと思ったりもしますね。


05 304号室、白死の桜
…★★★☆
Die作曲。
ダーク且つメロディアスなミディアムナンバー。
京さんによる早口気味な台詞でスタート。
病により死を迎える者の心情を綴った歌詞は中々にインパクトがあります。
それを美しく儚げなメロディラインに乗せ表現する。
この情緒溢れる表現は日本人のバンドだからこそではないでしょうか。
強いてはヴィジュアル系と呼ばれるバンドの数多くが強みとしている要素かなと思いますね。
アコースティックギターによるカッティングや、変則的なフレーズを決め込むドラム等、演奏にも注目です。

MVでは各メンバーの演技も見られます。
薫さんとtoshiyaさん怪演(?)は必見です。笑


06 Cage
…★★★☆
薫作曲。YOSHIKIさんプロデュースによる4枚目のシングル。
儚げなオルゴールから一転、勢いのあるバンドサウンドへ。
緩急のある展開がスリリングでいちいちドラマティック。
悲哀を感じるメロディアスな楽曲で、当時この曲でミュージックステーションにも出演しました。

他のシングル曲に比べ、YOSHIKIさんが作曲の段階から深く関わっているらしく、一番彼によるアイデア等が盛り込まれた楽曲なのではないでしょうか。
でもこのサウンドクオリティを聴けば、それも納得。
無駄な隙間の無いサウンドと、完璧なプロダクションは彼の経験やノウハウが活かされているからこそなのかもしれません。
ラスト落ちサビでのピアノのフレーズは、過激な歌詞の裏側に隠された哀しみや優しさを表現しているようで、深みを与えているセクションだなと思いますね。

間違いなく初期の名曲の1つだと思います。


07 蜜と唾
…★★★☆
薫作曲。読み方は「ツミトバツ」。
「加害者の僕から、被害者の君へ」という京さんの台詞からスタートするハードコアナンバー。
ヘヴィなギターリフと、シャウトを織り混ぜた激しく掻き立てるような曲調から、キャッチーでメロディアスなサビという彼らの王道展開へ。

一般的に考えればこれだけ激しい楽曲でも、DIR EN GREYを好んで聴くリスナーからしたら比較的聴きやすい楽曲なのではないかとは思います。
但し、歌詞の内容のストレートな過激さと言ったら彼らの楽曲の中でもピカイチです。
簡単に要約すると、クリスマスイヴに14歳の少女を犯し、その後に身体を薔薇薔薇にしてしまうといった内容。
サスペンスドラマの犯人もドン引きしてしまう程の残酷さですよ。笑
一部歌詞が伏せ字にされていたり、直接的な表現は抑えられているとはいえ、この内容をメジャーでリリースする凄さたるや。

とはいえ実際はインディーズ時代から既に存在していた曲で、予定では当時シングルとして切る予定だったとか。

どのみち最も恐ろしいクリスマスソングでしょう。笑
ちなみに2011年にリメイクされてますが、そちらは更にドロドロ感が増してます。笑


08 mazohyst of decadence
…★★★☆
薫作曲。9分24秒に及ぶ、気怠いテンポの長編ナンバー。
「聞いてる内に眠たくなって次に飛ばしたくなるような感じにしたかった」と語るように、敢えて大きな盛り上がりやキャッチーなメロディを排除した内容となっています。
イントロの怪しげな音色と赤子の泣き声が既に物語るように、「中絶」をテーマにした重々しい世界観の楽曲。
それを「強姦」をテーマに取り入れた楽曲の次に配置しているのが憎らしい。笑

MVでも過激なまでにその現場を描写しており、映像に一部規制がかかりました。
なにより楽曲中盤の、中絶を決意する女性と医師との会話をイメージした台詞がインパクト絶大。
台詞の言い回し等は、実際にこんな医者いないでしょと、ツッコミたくなる仕上がりなのですが、演奏や台詞後の女性コーラスなどの演出のお陰で不思議と緊張感は半端ない。
下ろされる子ども目線の痛々しい歌詞を、シャウト混じりの悲痛なボーカルで表現するラストの大サビにも凄みを感じます。

2011年以降、度々ライヴでも演奏されているのですが、そのアレンジがとても格好いいんですよね。
より演奏がヘヴィになり、ドゥーミーな香りが漂うものとなっていました。
そのアレンジで再構築した音源が心から欲しかった…。
今でも心の何処かで待ち続けています…。


09 予感
…★★★☆
YOSHIKIさんプロデュースによるDie作曲のシングル曲。
DIR史上最も爽やかでキャッチーなメロディアスチューンとなっており、前曲の重々しい空気から一転して、清涼剤のような役割を果たしてくれています。
煌めくような綺麗なアルペジオが印象的で、MVの色調通り、白さを感じる楽曲です。
今作の中でも「ゆらめき」に次いで、ヴィジュアル系の王道ソングとなっている気がします。

ラスト大サビ裏での台詞を発案したのは作曲者であるDieさんなんだとか。
印象的なパートなので、後のヴィジュアル系バンドが影響を受けた楽曲をリリースする事もちらほらありましたね。笑

ドラマ「女医」のタイアップが付いていて、MステやカウンドダウンTV等にも出演していた事から、未だに彼らの中で最も有名な曲の1つなのではないでしょうか。
"ディルはハードで苦手"といった人でも「予感」は好きだという人も多く見かけます。
初期の彼らの代表曲の1つとして扱っても良いのかな。


10 MASK
…★★★☆
薫作曲。ヒトラーの演説の一部を切り取った冒頭からバンドサウンドへ。
軽快で小気味の良いリズムが特徴で、歌詞は"独裁"洗脳"ナチス"戦争"を連想させる意味深な内容となっています。

イヤホンで聴いたときに右と左で交互に声が聴こえるようなパンを利用したギミックが施されていたり、要所要所に呟くような台詞が挿入されていたりと、聴いていて発見が多い楽曲でもあります。
凝った作りの気持ち悪い(誉めてます)Aメロ→シャウトを含んだ激しいBメロ→伸びやかに広がるメロディアスなサビ といった構成。
そしてラストは演奏が終わったかと思いきや…。
全体を通して沢山のギミックが施された楽曲です。
なんだかんだ好きなのだけど、大粒だらけの作中ではインパクトは弱めかもしれません。


11 残-ZAN-
…★★★☆
YOSHIKIプロデュースによるメジャーデビューシングルの内の1曲で、作曲者は薫さん。
この曲でMステに出演した際、多くのクレームを生んだという狂気に満ちたハードコアナンバーです。
リリース当時のライヴでは、オーディエンスを煽るようにサビを何度も繰り返し10分以上も演奏を続けることが多かったとか。
恐らく歌詞は愛する女性を殺めてしまう内容でしょうね。
それを表現するシャウトのキレ味がとにかく凄い。
更にただ激しさや狂気で押し切るだけではなく、サビ後の怪しげなアルペジオや京さんの表現力から、日本のホラー要素を感じられる世界観を演出。
ただ激しさだけに特化したバンドなら、DIR EN GREYはここまで世界的に高い評価と不動の地位を築くことはなかったでしょうね。
どんな楽曲も、濃厚で唯一無二の世界観を表現する各メンバーのセンスがあるからこそ。

MVではホラー色を強く押し出した過激な映像となっており、これをメジャーデビューシングルにしてしまう彼らは、当時から尖っていて異端だったことが伺えますね。笑

ラストは「君がいない…」という呟きを繰り返し、ピーという心音を連想させる音で終了。
主人公の虚無感を感じさせる静かな終わり方です。

ちなみにリリースから10年後の2009年、「残-ZAN」は「残」としてリメイクされますが、驚く程に進化していて本当に格好いいですよ。


12 アクロの丘
…★★★★
YOSHIKIさんプロデュースによるメジャーデビューシングルの内の一曲。
アクロとは実在するアクロポリスという名の丘から。
薫作曲による9分を越える長尺のバラードです。
歌詞は、愛する女性と死別してしまった男性目線。
丘に吹きすさむ風の音のようなSEが流れる中、静かに聴こえてくる寂しげなアコースティックギターによる調べに、バンドサウンドが重なるイントロが素晴らしい。
生のストリングスを取り入れたアレンジもYOSHIKIさんによって施され、広大な土地に独り佇むような淋しさと、スケール感を兼ね備えた物悲しい楽曲になっています。

この曲、各セクションのメロディがどれも秀逸で。
更に中盤の泣きのギターソロは必聴です。
個人的に、僕が知る限りの全ての楽曲の中でもTOP10に入るくらい好きなギターソロですね。
その後のテクニカルなベースソロも格好いい。
バラードながらも、各メンバーの演奏も聞き所満載な曲だと思います。

そして何より記述しておきたいのが大サビ後、ラストの展開が切なくて堪らないんです。
最後にサビをそのまま繰り返して終わりではなく、更に新しいメロディが待っているというDIR EN GREYお得意の展開。
こういったドラマティックな楽曲構成が多いのも、ヴィジュアル系の強みであり魅力だと思っています。

不覚にも大好きな楽曲なのにも関わらず、いつも以上に上手く言葉として表現できません(;_;)
言葉にすると安くなりますが、本当に名曲なんです。
この曲の中で鳴る全ての音が、この楽曲の世界観をきちんと表現してると言いますか。
特別珍しいサウンドを奏でている訳でも、斬新な楽曲構成やコードを使用している訳でもない。
それなのに独特の空気感が流れているというか。
大袈裟ではなく、この曲に近い空気感を放つ楽曲を僕は一曲たりとも聴いたことがないです。

改めて、長さを微塵も感じさせない名バラードだと思います。


13 GAUZE-mode of eve-
…★☆☆☆
京さんによる呟きに、不気味に金属音が鳴り響くインストゥルメンタル
厳密に言うと、「アクロの丘」の演奏終了後から始まっています。
そのまま次のトラックに流れるのですが、このトラックは事実上5秒未満という僅かな時間で終わってしまいます。笑

「アクロの丘」で穏やかにアルバムを締めるのは綺麗過ぎると判断しての収録なのかと思われますが、正直あまり好きではないです。笑
まぁ、1曲目と似てるサウンドなので、再びアルバムを1からリピート再生するには良い仕掛けなのかもしれません。


総評
メジャー1stアルバムという事で、一枚で様々なDir en greyの顔を知ることの出来るバラエティ豊かな作風となっております。
X JAPANYOSHIKIさんによるプロデュースで話題となり、より世間に存在を知らしめるきっかけとなったヒットシングル5曲もしっかりと収録。
初期の彼らを知るにあたって最も抑えるべき作品となっているのではないでしょうか。
各楽曲の個性やクオリティは勿論、1枚のアルバムとしての起承転結も申し分なし。
LUNA SEA黒夢などに影響を受けた結成初期の彼らですが、このアルバムはそれ以降の新たなヴィジュアル系の基礎のようなポジションになれる程のインパクトとオリジナリティを確立したのではないでしょうか。
何より王道と邪道のバランスが絶妙。
如何にもな程にダークでコテコテのヴィジュアル系なのですが、その中に光るメロディセンスと、激しさの中に潜むキャッチーさは類を見ない程。

残虐性の高いテーマと王道のヴィジュアル系ど真中を高いレベルで融合させた作品かなと思います。

DIR EN GREYの長いキャリアの中で語るとしたなら、僕はこの作品を彼らの最高傑作としては選びません。
ですが間違いなく、90年代のヴィジュアルシーンの名盤の内の1つである事を記述しておきます。

総合点数は91点。
…★★★ 抑えておきたい90年代の名盤。

BLUE VICES/DEAD END

1988年12月16日に発売された
1枚目のシングル。

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評価
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。


1 BLUE VICES
…★★★☆
メジャーデビュー作品「shambara」をリリース後、ドロップされたシングル曲。
さて、DEAD ENDと言えば1984年に結成された"元祖ヴィジュアル系"、"ヴィジュアル界の裏ボス"と語られることも少なくない絶対的なカリスマ性を持った存在でございます。
BUCK-TICKX JAPANLUNA SEA、そしてそれ以降のヴィジュアル系バンドに多大なる影響を与えた伝説のバンドです。

従来の海外から伝わるメタルやハードロックに、日本由来の耽美さとダークさを融合させ、独自の世界観と音楽性を確立していた彼らですが、このシングルはそれまでの音楽性と、後にキャッチーなアルバムをリリースするまでの過渡期となっております。

キーボードのような電子的な音色で奏でる、印象的なギターフレーズでスタートするこの楽曲。
割りとゆったりめなミディアムロックナンバーです。
その独特なギターフレーズを軸として、大きな盛り上がりを敢えて作らず淡々と進んでいくのですが、メロディが聴きやすいお陰か不思議と退屈に感じる事はないのですよね。

広大な草原、はたまた海や空。
そういった大きさを感じる広がりのある音像とスケール感を持った楽曲で、この1曲を聴くだけで彼らがこの時点でいかに大物の風格を纏っていたかが分かる…。

そして何より記述しておきたいのが秀逸なBメロ部分。
美しいファルセットを混じえた浮遊感のある耽美なメロディライン。
この空気感は後にヴィジュアル系に受け継がれ、ある種スタンダードになっていくのですが、もう既にこの時代からそれを誰の模範でも無くオリジナルとして確立しているのだから天才としか言いようがないですよ。

時代を越えて日本の音楽史に刻むべきだろう曲、DEAD ENDには沢山ありますよね。

デビュー後1枚目のシングルの割にはあまりスポットの当たらないイメージがありますが、是非とも聴いてみてほしいですね。


2 WIRE DANCER
…★★★☆
エフェクトが掛かったMORRIEのボーカルフレーズのリフレインから始まる、疾走感のある爽やかなロックナンバー。
冒頭の始まりが70~80年代くらいの海外のディスコや、ニューロマンティックからの影響を感じますね。
この曲も1曲目同様、ポップでキャッチーな歌メロと解放感のあるキレイなサウンドなのですが、爽やかさと分かりやすさではこっちに軍配が上がるかな。
ただ、分かりやすいという言葉を所謂シンプルといった意味合いでこの曲に使用する事は限りなくナンセンス。

Aメロ→Bメロ→Aメロ と来てそのままBメロが来ると思いきや、そのままサビへ突入!( ゚Д゚)
Bメロは一度しか登場しない楽曲構成なのです。

それだけで従来のロックや歌謡曲とは一線を画してますよね(笑)

しかも一度きりにするには勿体ないくらい格好いいセクションなんです…。

この曲も晴れ渡る大空を感じさせるスケール感があるように感じます。
いかにもな壮大な楽曲を制作しようという意図は全く無い筈ですし、サウンド面の演出も決して過剰ではない。
それなのに、この広がりと大きさは何処からきてるのでしょうかね。

そして何より僕が驚いたのはラストのMORRIEロングトーン
伸びやかなロングトーンから、そのままシャウトへと移り変わるのですが、これが格好いいなんて半端な言葉じゃ表せませんよ。
この時代に既にこのシャウトの出し方をしているなんて…。
そう。後のヴィジュアル系のスタンダードとなった、所謂ヴィジュアルシャウトの原点なんですよね。

何処までヴィジュアル系に影響を与えたカリスマなんだろうって恐ろしくなりますよ。


総評
表題曲はオリジナルアルバム未収録、そしてカップリングはこのシングル作品でしか聴けないレアな楽曲です。
ですがシングルは今ではプレミア価が付いていて、値段が沸騰した現在で手に入れるのは少々気が引けるでしょう。
なのでこの2曲を聴きたいのなら、2009年に発売されボーナストラックとして2曲が収録された「shámbara[+2]」を購入することをオススメします。

改めて書きますとこのシングルが発表されたのは1988年。
どうしてもリリースが古くなった作品に触れる事に、なかなか腰が上がらない人も少なくないでしょう。

でも、自分の好きなアーティストのルーツや、影響を受けた人物や作品を知るのって純粋に楽しくないですか?
そこを知った上で、再び好きなアーティストを聴いたときに新しい発見があったり、そのアーティストが表現したかったことを深く理解できるきっかけになったりするものです。

そういった意味では、ヴィジュアル界の中でDEAD END以上に各バンドのルーツとして影響を与えたバンドはいないのではないでしょうか。

かの有名なLUNA SEAやL'Arc~en~Ciel、そして黒夢Janne Da Arc
その他にも書ききれない程に影響を受けたヴィジュアル系バンドが沢山存在します。

もしかすると貴方の好きなバンドのルーツを辿ったときに、彼らの名前を目にする事になるかもしれません。


総合点79点。
★★☆…歴史を知る中で手にいれたい盤。

色纏う人展/彩冷える

2020年3月8日に配信開始されたミニアルバム。
僕が今回レビューするのはWIZY限定のクラウドハンティングで販売されたCD音源、パッケージ版になります。

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評価
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。

01 intro
…★★☆☆
ケンゾ作曲。
WIZY限定発売のパッケージ版のみに収録されている打ち込みによるエレクトロなインスト曲。
女性の声をサンプリングしたような音声が印象的で、聴き手の期待を掻き立てるように加速してゆくテンポが気持ち良い。更にはどのタイミングで次の曲へ変わったのか分からない程、自然に次の曲へと繋がる仕組みも。
esを聴くならこちらとセットで聴く事で、より気持ちも高まること間違いなしでしょう。
この1曲があるかないかでは1枚通しての印象が変わるのではないかと思えるほど印象に残るトラックです。
改めてパッケージ版を購入して良かったと思いますね。


02 es
…★★★☆
夢人編曲のケンゾ曲。
インストの打ち込みにバンドサウンドが重なる事で楽曲スタート。リフレインを用いた彩冷えるらしいキャッチーなメロディと、ガツンと響く力強い演奏がクールなアップテンポなロックチューンです。
1曲目のインストで散々聴き手のテンションをヒートアップさせてからのこれはズルい。
彩冷えるってこんなにも格好いいバンドだっけ?っと初期から聴いてる僕ですら思ってしまいましたもん。
再結成してからも何も変わらぬ音楽性で、ファンが求める楽曲を提示し、限りなく誰もガッカリさせない復活を遂げた彼ら。
ですが間違いなく、あの頃のままの彩冷えるではない。
確実にグレードアップして進化したサウンドなんですよね。

嘆きにも似た感情を綴ったシリアスな歌詞を、今の葵の表現力で歌われたら伝わらない訳がない。
ラストサビの「誰か僕を化け物だと終わらせてよ」の、がなり気味な歌い方には鳥肌が立ちましたよ。
あとは要所要所に1曲目のインストのフレーズが顔を出す辺りも繋がりが見えて、つい興奮してしまう。
出たしからこんなにも心を掴むんですから、最初からクライマックスなミニアルバムって言いたくなります(笑)


03 積み木くずし
…★★★☆
インテツ作曲。何処と無くエスニックな香りが漂う、ミディアムナンバー。
4つ打ちのリズムに、骨太なベースと大人っぽいお洒落なアコースティックギターが鳴るAメロの空気感は彼らの中での新境地ではないでしょうか。
サビでは中華風なシンセが彩り、そして一筋縄ではいかない引っ掛かりのある和を感じさせる歌メロ。
中々にアーティスティックな楽曲ですよねこれ。
知的で哲学的な歌詞も、楽曲のイメージにハマっています。
個人的には歌詞カードを見ながらじっくり紐解いて聴きたくなる1曲です。


04 餞
…★★★☆
夢人作曲。
歌謡テイストのメロディがドラマティックなミディアムナンバー。何処と無く80年代を彷彿とさせる懐かしさを感じるメロディと色気のある歌詞がピッタリ。
彩冷えるの歴史を振り返っても、ありそうでなかったタイプの楽曲じゃないですかね。
強いて言うなら1作前のアルバムに収録されていた「前戯」と、インディーズ時代の「カナリア」を足して2で割った感じかな。
前戯のアダルティな匂い、カナリアの相手に溺れてゆく被虐さ、どちらの要素も感じられます。
この曲でも、タイトなドラムやボーカルの表現力が光ってますな。


05 トゥルリ ラルラ
…★★★☆
ケンゾ作曲のゆったりめなポップナンバー。
涼しげなアコギと、タイトルを繰り返す覚えやすいサビが印象的。
徳間ジャパンからのメジャーデビュー後の時期にリリースされていても違和感のないような"ほのぼの感"があります。
「彩-irodori-」(メジャー1stアルバム)のような明るくポップな音楽性を、現在のキャリアを重ねた彼らがやると当時よりも深みがあって良いですね。
前向きなメッセージにも仄かな毒が含まれていることによって、当たり障りの無い言葉だけでパッケージされたメジャー時代の歌詞よりも、ずっと説得力が生まれてる。

楽曲単体でのパワーはそこまででもありませんが、この流れで聴くと不思議と懐かしさと安心感を感じられて良いんですよね(笑)
メジャーデビュー当時はポップにセルアウトさせられた音楽性に不満や、思うことがあったけど、なんだかんだどの時期の彩冷えるも好きなんだな自分って改めて気付かされました。


06 supernova
…★★★★
インテツ作曲。
デジタルとバンドサウンドを上手く融合させた、疾走感のあるメロディアスチューン。
この手のサウンドは彼らのお得意ジャンルでしょう。
AYABIE時代を思わせるキーボードと、琴のような音色とのバンドサウンドの融合に"らしさ"を感じるイントロ。
そして和を感じさせるキレイなメロディと、文字数を詰め込んだサビ。
待ってました!ってくらい王道のキラーチューンですよねこれ。
彩冷えるとAYABIE時代の音楽性の融合というか、総括的な感じもします。

そして何より素晴らしいのは歌詞。
言葉数が多く、深読みが出来る奥行きを持った歌詞が特徴な今作ですが、その中でも群を抜いて刺さった歌詞がこれ。

"もしも主人公が多すぎて 物語るものがないのなら
引き出しに押し込んだその話を聞かせて
誰も自分で向かない限り、暗闇を見ようとはしない
そこに答えがある 痛みを止めないで"

"浮き沈みも数えてみて わりと好きになれる
生きてるだけで丸儲けじゃだめさ"

"もしも助けてと叫ぶのなら 必ず僕が見つけるから
荒れ狂う航海も後悔して進もう
話すな と言われたあの過去も断末魔のように叫ぼう
そこに答えがある 光は止まらない"

思わず歌詞の一部を抜粋してしまいました。
めちゃくちゃ良いこと言ってません?*1
痛みや傷を抱え、生きづらさを覚える10代から20代の若者には特に聞いてほしいメッセージ。

辛い事や汚い部分から目を背け思考を停止したまま生きるほうが遥かに楽でしょう。
でも、そこに目を向けて直視してこそ気づき、得られるモノがある。

この歌詞こそ、現代を生きる全ての人に届いてほしい。

個人的にこの歌詞と同じ考えで長らく生きてきてるので、この曲を聴いたときは思わず涙が出ましたよ(つд;)

いつか子どもが出来たら聴かせたい1曲。



総評
歌モノ5曲というボリューム面での物足りなさはありつつも、飽きのこないバラエティ豊かな楽曲群のお陰で1枚としての満足感は中々のものです。
過去にはメンバーチェンジが多く、時期による音楽性の変化などといった理由から、「この時期は好きだけどこの時期からは…」というリスナーも少なくないはず。
現代まで彩冷えるを追ってる人は勿論、そのような人達が聴いても刺さる作品ではないでしょうか。
そしてまだ彩冷えるを聴いたことのない人にアピールするにも充分なクオリティとポテンシャルを持った一枚です。

ただ、これだけ幅広い層にアピールできる作品にも関わらずCDとしてのパッケージ版はもう手に入れられないのが残念なところ。
配信という形での購入でも満足できる人ならば、今からでも遅くないので是非。

ファンとしてはそろそろ、近年更に表現力が増している葵のボーカルの表現力が光る激しい楽曲や、復活後未だ発表されていないタケヒト作曲によるナンバーが聴きたい頃。

これからのリリースにも期待大ですね。

総合点数は88点。

*1:T_T

Gardenia/MALICE MIZER

2001年05月30日に発売されたKlahaがvoを務める第3期MALICE MIZERによるシングル。

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評価 (基本そのアーティスト内での評価)
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。


01 prologue ~回想~
…★★★☆
穏やかなピアノとシンセによる哀しげなインスト。
26秒という短さでそのまま次の曲へ繋がる仕様となっており、独立した単体の曲というよりは2曲目のイントロと解釈して良さそうですね。
★の数はGardeniaとセットとしてカウントしての評価とします。


02 Gardenia
…★★★☆
ピアノとヴァイオリンによる旋律が、美しくも哀しい雰囲気を演出するクラシカルなミディアムナンバー。
カスタネットの音を効果的に取り入れたり、様々な楽器が仕様されておりますが、しっかりとバンドサウンド
主張しすぎず華を添えるギターやドラムの演奏も上品です。
Aメロ→サビといったシンプルな展開ながら、上品で耽美な世界観とメロディの奥ゆかしさは中々他のアーティストでは味わえない完成度ではないでしょうか。

さて、Gacktが抜けた後のマリスと言えば、評価の分かれる3代目ボーカリストKlahaさんの存在です。
低音を効かせた伸びやかでオペラティックな歌唱をする彼の歌声は、Gackt時代が好きな方からするとイメージに合わないと思っている方も多いはず。
ではこの楽曲ではどうでしょう。
Gacktの代わりのボーカルではなく、Klahaならではの表現と存在感が遺憾なく発揮されてると僕は思うんですよね。
伸びのあるメロディ、クラシカルな楽曲との相性はGacktにも負けず劣らずですよ。

「3期はGacktじゃないから嫌ー!!(*`Д´)ノ」と食わず嫌いをしている方が居たら、この曲を知らないでいるのは余りに勿体無い。

Klaha時代も中々良いよ、と自信を持ってオススメしたいMALICE MIZERの名曲の一つだと思います。


03 崩壊序曲
…★☆☆☆
パイプオルガンと打ち込みのリズムによるダークなインダストリアル的楽曲。
全編打ち込みでバンドサウンドは一切なし。
ボーカルも低音での呟きばかりで味気ないです。
サビというサビは無く、強いて言うならラストのクワイア風な所が盛り上がりどころなのか?(^^;
この手の、メロディや展開がしっかりしていないタイプの曲は好みじゃないので、あまり良さが分かりませんごめんなさい。(笑)

04 Gardenia (instrumental)

05 崩壊序曲 (instrumental)


総評
Gardeniaは3期のマリスを代表する素晴らしい曲なのは間違いありませんが、個人的に3曲目の蛇足感を否めないところがあります。
表題曲へと繋げるイントロまで別トラックに用意してまで世界観を構築しようという意識が見られるのにも関わらず、唐突に3曲目で雰囲気が変わってしまい表題曲の余韻を感じられないのですよ。
せめて曲順が逆なら、光の無い真っ暗な場所から視界が晴れてきて…みたいなものを感じられたかもしれない。
いや、感じられないか。(笑)
わかりません!o(T◇T o)

でもまぁ何度も言いますがGardeniaは名曲ですしアルバム未収録な為、このシングルを買う価値は大いにあります。

総合評価は65点!!
…★★☆の良盤。

SINNERS-no one can fake my bløod-/lynch.

2018年4月25日に発売された通算12枚目のアルバム。
2017年に発売されたミニアルバム「SINNERS-EP」にシングル「BLØOD THIRSTY CREATURE」の収録曲を追加し、ゲストベーシストによるベースを復帰した明徳により撮り直し&再MIXをした1枚。

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評価 (基本そのアーティスト内での評価)
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。


01 SIN
…★★☆☆
exギルガメッシュのRyoが携わった、テンション爆上げSE 。ヘヴィなギターサウンド4つ打ちのEDMが融合したライヴの入場に打ってつけな曲ですね。合間に入るvo葉月によるシャウトや女性コーラスが雰囲気出してます。

 
02 SORROW
…★★★☆
「SINNERS-EP」ではラストに配置されていた楽曲が、今作では実質1曲目を飾るという形でのスタート。
復帰した明徳を含めた5人のlynch.としての覚悟を感じさせる始まりになっている気がします。
今作をリリースするにあたってMVが製作されましたね。
冒頭の歌詞通り、夕立や夜空が似合う悠介作曲のメロウなバラード。
とは言っても「THIS COMA」や「FAREWELL」のように幻想的な音色を主体に淡々と進んでいくタイプではなく、演奏やボーカルにも力強さを感じさせ、パワーバラードのような捉え方も出来るかな。
EPでのベースを担当していたMUCCのYUKKEによるフレーズを崩しすぎず、明徳ならではのテイストも感じさせるベースラインも中々深みがあって良いですね。
ひとり黄昏て聴きたい一曲。


03 BLØOD
…★★★☆
ギターのノイズから雪崩れ込むような葉月のキレ味抜群のシャウトで聴き手の心も一瞬で暴れモードへと早変わり。ヘヴィかつ疾走感のあるメタルコアナンバーです。
彼らの中では比較的爽やかめでキャッチーとも言えるサビメロと交差するようなシャウトコーラスの対比が格好いい。
「BLØOD THIRSTY CREATURE」ではこの曲をリードトラックにする予定だったんだとか。
結果インパクトのある「CREATURE」を表題曲に選んで正解だったと僕は思っています。
この曲は2分強という短い時間であっという間に駆け抜けて終わる潔さも良いですね。
余談ですが、僕はランニング中に良く聴きます。(笑)


04 BLACK OUT DESTROY
…★★★☆
冒頭いきなり間を空けずに「YEAHー!」というテンション高めのシャウトから始まります。
早めのテンポの演奏に葉月のシャウト→テンポダウンしてメロディアスなサビ
というベタな展開なのですが中々に格好いいんすわ…。
サビでは英語のように聴こえる歌唱法をしていますが日本語詞なのが面白い。
DIR EN GREYの京が海外進出後に、英語を使いがちなメロにも日本語を使用する事に拘るようになって以降、ヴィジュアル界ではハードな楽曲でも日本語使うバンドが多くなってきた気がする。
個人的には英語ばかりで在り来たりな洋楽被れなバンドがつまらないと思ってしまうのでむしろ嬉しい流れです。
EPでの人時(黒夢)のベースも貫禄を感じられ流石でしたが、明徳のテイクもうねるようなグルーヴで好きっす。


05 KALEIDO
…★★★☆
定期的にやってくる歌謡シリーズ第●段!!って感じのメロディアスでキャッチーな楽曲です。
葉月がTwitterでアニメのタイアップを狙っていたと発言していた通り、メロディも覚えやすいんですよね。
星空や太陽に煌めく真っ白な雪を連想させる、みんな大好きな悠介によるイントロのディレイフレーズが美しい。
ベースラインについては個人的にEPでのPay money To my PainのT$UYO$HIによるテイクがツボで。
2番Aメロのゴリゴリに攻める感じや大サビ明けのスライド音とか堪らなく好きだったんですよね…。
綺麗で繊細な世界観の楽曲なのにここまでゴリゴリ行きますかってくらい存在感があって。
それ故に明徳verは中々馴染めなかったのですが、これはこれで味を感じられるようになりました。
要は完全に好みの問題ですね。(笑)

歌詞は亡くなった者への、残された者側の気持ち。
過去の思い出を振りほどけず、悲しみに立ち止まる事も少なくない毎日。
「ああ それでも忘れゆくよ 僕らは生きてくんだから ちょっと寂しいでしょ?」
この言葉を歌詞にするのが生々しくていいですよね。
大切に死者を想い忘れないと心に決めていても流れ行く日々の日常の中で忘れていくんです。
それはマイナスな意味だけではなくですよ。
そんな人間の身勝手な心こそが弱さであり生きる為の強さなのかもしれません。


06 THE WHIRL
…★★★☆
不気味なSEと楽器陣の重低音サウンドで幕を開けると、一転して静かになり囁くようなボーカルからのシャウト&台詞!からの広がりのある伸びやかなサビという構成。
目まぐるしく展開してゆくシリアスで不穏な空気を纏った楽曲です。ミディアムテンポなのだけどヘヴィな演奏と緊張感のあるダークな雰囲気のお陰でハードな印象が強い。
実はこの曲、インディーズ時代にリリースされた楽曲で、3度目の再録になります。
ベースのテイク違いも合わせると4パターンですね。
最近のlynch.の持つダークさとは違った空気感を持つ曲ながら、今のlynch.にも違和感なくハマってます。
むしろ当時のテイクと比べるとかなり凶悪になり、各パートの表現力も随分と進化していて見違える程格好いいです。


07 CREATURE
…★★★☆
「BLØOD THIRSTY CREATURE」のリードトラック。
お経のようなリズムをヴィジュアル系チックに囁くAメロが印象的なダークなラウドロックです。
ここ、「我無雅吽 割レル喝采ト共鳴 感染症ノ崇拝ト生
邪無蛇吽 溢レル天性ノ強欲 体内巡ルENDLESS GREED」
と歌っているのですが、漢字と片仮名オンリーの表記は最早ヴィジュアル系の受け継がれし文化のようなものです(笑)
本人も確か90年代のV系LUNA SEAの「IN FUTURE」へのリスペクトを込めたオマージュって言ってなかったっけかな。

キメの多いリズムや展開など、既存曲にありそうでなかった新鮮味がある曲だと思います。
そしてシャウトパートのキレの良さたるや…。
シャウトパートからの激しさも残しつつ、流れるような余裕のあるサビもクールで格好いい。
年数を重ねて自信を付けたからこその貫禄のようなものを感じる一曲。


08 DIES IRAE
…★★☆☆
出だしのドラムによる「シャンシャン…ドドドドドドドド!」はこれ完全にLaputaの「泥~IN BOG…IN WORST~」を意識しただろって思っていたら本当にそのつもりらしいです(笑)
BPM200越えの高速ツタツタナンバー。
がなり声とシャウトのみで駆け抜けていくハードな楽曲で、ライヴでは間違いなく暴れ曲担当ですね。
シャウトの出し方が何処と無く昔ながらのヴィジュアルシャウトを感じる。
あとギターのチョーキングが印象的に使われていて良き。


09 TRIGGER
…★★★☆
EPではLUNA SEAのJがベースを勤め、MVにも出演した事が話題となったメロディアスな王道ハードロック。
EPではSE除く1曲目というトップバッターでしたが、今作ではトリを飾るという配置に。
この配置で聴くと明徳の復活で再び狼煙を上げたぞっていう反撃開始のような楽曲にも聴こえてくるんです。
アルバムは曲をどう配置するかによって、それぞれの楽曲の持つ役割や印象もガラっと変わるから面白い。
楽曲の持つ力強さやエネルギー、そして歌詞に含まれる「月」というワードといい、EPでのJによるベースがとてもこの曲にハマっていたので、明徳はハードルが高かったと思われますが彼らしい音色で別の良さを引き出してくれました。
中盤ではツインギターによる掛け合いのソロもあり、時代に左右されない普遍性のあるストレートなVロックチューンに仕上がっています。

辛い過去や痛みも受け入れ、それでも尚未来に向かっていくような、気持ちが熱くなる楽曲です。



総評
★★☆…良盤
「SINNERS-EP」 「BLØOD THIRSTY CREATURE」を持っていない方にとってはお得なベストアルバムといった捉え方も出来る1枚ではないでしょうか?
どちらも持っている人にとっては少々コレクター要素が強くなる面もありますが、1枚の中で流れや纏まりが良いのでフルアルバムとして聴けるのは強みになるはず。
僕は上記の2枚も持っていますが、この作品をフルアルバムとして聴く事のほうが断然多いです。
全曲ダレることなく聴けて各楽曲のクオリティも申し分なし。
lynch.に興味がある方にとっての入門としても悪くないのではないかと思います。
総合評価は87点です。

Nothingness Cage【限定50枚】/KISAKI

2020.7.20 12:00~発売
目黒鹿鳴館、救済プロジェクト バンド・アーティスト企画第一弾として販売したCD(ポストカード&チェキ付)

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評価(基本そのアーティスト内での評価)
★★★★…特別大好きな曲で特にオススメしたい曲。
★★★…好きな曲でオススメしたい。
★★…個人的に普通。悪くないよね!くらい。
★…正直自分はあまり良さを見出だせない苦手な曲。


01 Nothingness Cage
…★★★☆
限定50枚という言葉にコレクター心を擽られ、前回の記事で紹介したMIRAGEのCDと同時購入。
ちなみにMIRAGEの方を先に聴いていたので、僕の心がロストインパラダイスな状態でこのCDを聴いた事を予めご報告しておきます。(詳しくは前回の記事参照)
なので真っ当な評価が出来ている保証はいつも以上にございませんのでご了承ください(^_-)

冒頭のアルペジオ。再生2秒で既に感じられる90年代の王道ヴィジュアル系臭。そのままメロディアスなサビを迎えると其処には待ち焦がれたボーカル、AKIRAの声が…。
そう、これだよ!!MIRAGEの方のCDでも聞きたかったのは!!笑
昔のゲームで鳴ってそうな微妙にレトロなイントロのシンセ音すら愛おしいぜ(T_T)
これは皆が待っていた疾走感のある90年代メロディアヴィジュアル系チューンですわ!!

ただ約3分半という短い時間で、大きな盛り上がりの山場が来そうで来ないまま終わってしまうので少し拍子抜けしてしまったのも事実ですね…。
クオリティは決して低くないですが、もう少し練り上げる過程があれば名曲に近付けたのではないですかね。
チャリティー目的でのリリースとあって制作期間も長く確保出来なかった等の背景があるとしても…。
でもまぁ現役を退いたKISAKIさんの新曲が聴けたというだけでも有りがたいですよ。


総評
値段の割高さと内容の薄味さを考えるとコストパフォーマンス的にはお得とは言えないかな。
ただ新型ウイルスの影響で経営が困難なライヴハウスへの協力を謳っているので、まぁ大目に見ましょう。
KISAKIさん、強いてはMIRAGEの新曲が聴きたいと思えるリスナーさんなら買っても後悔はしないはず。
ですがやはりボリュームの少なさもあり、総合50点ですね。

★☆☆…並盤